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先週末に長男の通う保育園で
年に一度の親子遠足があった。 バスに乗って博物館とか動物園とか そんなところへ行くやつだ。 親子遠足、今までは ずっと嫁が長男と行ってたのだが、 今回は病院実習の日と重なって無理。 代わりに行くことになった。 代わりに行くのは構わないが、 もともと親同士の交流が皆無。 バスに乗って降りて行く先々で ぎこちない会話をするかと思うと気が重い。 入園以来のこの4年、ほとんど毎日 顔を合わせていても挨拶以上の 会話をしたことがないのだ。 しかも、親子遠足って ふつう父親じゃなくて母親が行くものだ。 ひと回りも(下手したらふた回り)下の ヤンママみたいな女子と どんな会話したらいいのか。 もともとの仏頂面で 無理して愛想振舞っても それは気持ち悪いだけだから、 ここは押し黙っていようと思った。 話しかけらてから応えればいい。 父親の失敗が子の交友関係に 影響することは避けるべきだ。 この日がわかっていたのに よりによって前夜は深酒の深酒。 ま、もうこの段階で失敗を してるのかも知れないw。 近年まれなほど酷い二日酔いで もはや愛想とかそんなレベルじゃなく、 車中では眠らないように吐かないように とにかくそれだけは死守しようと。 神様、どうかこみあげてきませんように。 「おはようございまーす」 保育園前にバスが3台。 長男のクラスは2号車のバス。 乗り込めば子供たちは昨日の延長だが、 こっちはそうはいかない。 行き先は葛西臨海水族館。 金町からはバスで小一時間だ。 車内には20組ほどの親子、 案の定、親はほとんどママばっか。 しかも、当たり前のように仲良しっぽい。 『ねぇ、誰?あのハゲオヤジ』 こんなこと思われてないか? 恒例により気にし過ぎな小一時間、 担任の主導で車内は歌いっぱなし。 長男のフォルテにつられて やけくそ気味に歌ってたら、 酸っぱいこみあげもおさまってきた。 ふいに、後ろの席から、 「がもちゃんパパですよね。おはようございます」と。 振り返れば、 長男いちばんの仲良し男の子、 げんちゃんのお父さんだった。 きょうは奥さんが出勤で代理だとか。 うちと似たようなものだ。 ちなみに保育園では、 親同士お互いを姓で呼び合うことはなくて、 だいたい「〇〇ちゃん(子供の名)パパ(ママ)」とか言う。 「山崎さん」や「小林さん」じゃなくて、 「さえちゃんママ」とか「なおちゃんパパ」って感じ。 このげんちゃんパパ、 4年間で朝夕に何度もすれ違ってるが、 いつも「現場」の格好をしている。 カーゴパンツを履いてるとか 会社の作業服姿だとかそんなんじゃなく、 今どき珍しいほどの現場ルック。 頭には必ずねじりタオルの鉢巻。 ノースリーブのシャツの上には、 小物入れ兼用のメッシュのベスト(必須アイテム)。 腰道具をぶらさげたまんまだったり、 土や砂がついたニッカを履いてたりする。 しかも、本人も狙ってやってるのか、 耳にはボールペンとかタバコとか挟んでたりする。 真っ黒に日焼けした顔に人のよさそうな笑顔。 もう昭和の高度経済成長期の日本、 強く優しい働くお父さんって感じなのだ。 バスは水族館に着いて、 それぞれ親子にわかれて自由見学。 何度も来てる場所なので、 長男を視界から外さないようにして、 ひたすら二日酔いの身体をいたわる。 やがて、お昼の時間。 レストランとか 弁当が配られるとかではなく、 各家庭持参の弁当を食べる。 しかもこの暑いのに外に出て芝生で食べるという。 マジですか。 親子の遠足とはいっても それは「課外保育」の一環とかで、 ジュースは持ってくるな、お菓子はダメだとか、 館内の売店での買い物も一切禁止。 親は、酒はもちろん煙草も吸っちゃダメなど、 いろいろ縛りがある。 芝生の上に 大きなシートが敷かれ、 それぞれ親子がバラける。 親同士が仲良しの小集団がいくつかでき、 『私もともと一匹狼なんで』派みたいなのが その回りにポツポツと。 げんちゃんパパはと見ると、 ヤンママグループの中心で盛り上がってる。 長男とふたりで食べてれば全然いいし、 別にいいや、と隅っこのほうで食べ始めた。 普段はろくに食べない長男が、 野外でみんなと一緒に盛り上がってるからか、 米粒ひとつ残さずきれーいに食べた。 こんなの初めて見た。 それにひきかえ。 嫁が忙しい間に作った弁当、 ひと口かじって全力で気持ち悪くなった。 二日酔いなんで食べられませんでした、 だなんて、嫁になんて言い訳しようかね。 長男はお友だちと遊びに行っちゃったし、 水筒のむぎ茶もとっくに底をついた。 眠さとだるさでまとろんでたら、 「お疲れさまでーす!!」 現れたのは、げんちゃんパパ。 まったく暑いですよね、 きょうは大変ですよね、 ホントやんなっちゃいますよね、、、 そんな他愛のない、ってか、 ぎこちない会話をしていたら 「飲みます?」 と、紙コップと水筒。 むぎ茶がなくなって喉が渇いてたんだ。 コップに手を伸ばそうとしたら 「飲めるんですよね?」と。 え? 聞けば、お茶じゃなくて「お茶割り」。 それって、禁止のお酒じゃないですか?? 「わざわざ休みとって出てきてるんですから、 このぐらい大丈夫ですよ」 あ、いえ、 ワタシ、さっき飲んだむぎ茶が 今ちょうど身体の中でお茶割りになってますんで、 気持ちだけ頂戴しておきます。 えぇ、すいません。 ってか、あのヤンママたちも 何人か水筒の中に酒入れてきてたらしい。。。 見つからないでタバコ吸える場所はあのコンビニの裏だとか、 君ら、中学の修学旅行を想いだしていないか?? お互いに遠慮しつつも 沈黙が怖いのは共通認識だから、 会話は澱みなく進む。 仕事の話になった。 げんちゃんパパは大工さんらしい。 立石でひとり親方でやっていて云々、 オフィスビルの仕事が多いので夜間専門云々、 でも、このご時世でもありがたいことに仕事は切れない云々、、、 「がもちゃんパパって、これなんですってね?」 と、言いながら、 両手を前に突き出して、 指をひらひらさせるマネをする。 この人も、つい最近まで畳屋だと信じてくれてたらしい。 いや、まぁ、 でも、そんな大したあれじゃなくて、 そんな仕事があるわけでもないですし。。。 その場を盛り上げるために 実態に多少の脚色をして話をしてみた。 きっとまったく知らない人が 聞いたら面白いと思うような話を 織り交ぜたりしながら。 「へぇー、やっぱりいいですねー。ピアノとか弾けると」 こういうときって、とりあえず聞き返す。 何か、楽器やらないんですか?? こう聞き返してみて 楽器をやってる人に遭うことはほとんどないけど、 ま、とりあえず聞く。 「いや、ちょっとギターをやってたんですよ」 はぁ、ギターですか。 いいじゃないですか。 瞬間、なぜかフォークギターを連想した。 げんちゃんパパの昭和な感じと ちょっと熱い感じが長渕とか 好きなんじゃないかな、と。 「実は、」 えぇ。 「ジョー・パスが大好きなんですよ」 え?ジョー・パスって、ジャズの?! なんて間抜けな問答してるんだ、オレは。 「ギブソンのフルアコ持ってて、押入れにしまったままなんですけど。 昔、まだ丁稚してて独身だった頃はよく練習してたんですよ」 曰く、 ・ジョー・パスはレコードで集めてかなり持っている。 ・溝がなくなるぐらいに聞きまくったけど、結局、ヴァーチュオーゾはコピー譜を買った。 ・バレルも聞くけど、やっぱりバーニー・ケッセルのほうが好き。 ・ピアニストも好きで、仕事疲れたときに聞くのは「ワルツフォーデビー」。 えぇー??げんちゃんパパ、マジで?? 「がもちゃんパパは、ピアノは誰が好きなんですか?」 え?あ、いや、うーんと、 バド・パウエルとかウィントン・ケリーももちろん、 エバンスは昔の大アイドルだったし。 ピアニストは全方位的に好きなんだけど(苦手なのはごく数人)、 なんとなく知ってるだろう有名な名前ばかりを挙げてみた。 「あーはいはい」 それと、最近だとケニー・バロンとか 「えぇ」 あ、やっぱり知ってるんだ。 「がもちゃんパパ、マッコイ・タイナーとかは聞かないんですか?」 あ、そうそう、言い忘れた! そう、マッコイはね、かなり好きなんですよ。 「ボクは、彼の若い頃の、コルトレーンでしたっけ?あの頃のが好きなんです」 あ、ホント? オレもね、あの頃のがいちばん好き。 ・・・ってか、あんた普通にジャズファンじゃん。 いやーびっくりした。 両手を前にひらひらさせてピアノの真似をした人を見て、 きっと音楽とかあまり聴かない人なんだろうな、と 勝手に思ってしまったけどさ。 彼のギターのルーツを聞くと、 その昔はクラプトンでヴァン・ヘイレンでホールズワース(!)で、 ジョー・パス以前はラリー・カールトンがアイドルだった、って こっちでもほぼ一緒。オレはクラプトンじゃなくて ジミヘン始まりだったけど、カールトンは未だに大好き。 歳聞いたら、あまり変わらないし、 なんだか意外なところから またひとり友だちができたぞ、と。 とりあえず、某店のセッションに 楽器持参で来ることを伝えて、 またこの続きはいつかな。
by showtkgg
| 2010-07-07 23:59
| 日常
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