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再び、瑞江の鍼灸院に来た。
こないだ鍼を打ってもらったが、 頭痛は依然続いてて、 状況は変わらず。 一度行って 効果がほとんどないのだから、 他所をあたる選択肢もあるけども、 せっかく紹介していただいのだし。 それに、 何よりもこの鍼灸師の先生、 独特のオーラがある。 ま、オーラって言ったって、 ただの勘違いかも知れないが 案外、当たるのだよね。 なので、もう少し通ってみようか、と。 「うーん、まだ痛いですか」 それでもやはり、 後頭神経痛なんだそう。 首筋、後頭部から側頭部にかけて 曲線を描くように神経が走ってて、 そこの痛みだろう、と。 ここ痛いでしょ?と 首筋と肩の間のポイントを いくつか押されると、 今度は頭全体に激痛が走る。 神経痛は、 寒さも原因のひとつ、だと。 寒いから筋肉が縮む。 縮みに神経が引っ張られて痛む。 または、筋肉が縮んだ結果、 血流が悪くなって引き起こす、 なんだそうな。 でもね。 寒さが原因といっても、 この頭痛が始まったのは1ヶ月前。 まだ寒いってほどじゃなかった。 「じゃ、最近始めたこととか、 今までと違うこととか何かしてない?」 ええ? 変わったことなんて、、、 と、はたっと思った。 自転車だ。 楽器を持たない仕事で 15キロ圏内ぐらいならば、 だいたい自転車で移動している。 帽子もかぶらないし冷えたといえば、 冷えたのかも知れない。 「その頭じゃねぇ・・・髪、伸ばしたら?」 いえ、真ん中はいつまで経っても伸びないんれす。 主に走るのは夜間。 頭を露出してて冷えたのか。 自転車に乗りたいのなら、 頭と首筋を完全に覆うこと、と。 帽子とマフラーか。 夏の間のクーラーの浴びすぎも 原因じゃないか、と鍼灸師は言う。 エアコン大好き人間だから、 そっちも思いっきりあり得る。 「神経痛は温めてたら絶対に治るから」 日に何回も温タオルを首筋にあててなさいよ。 タオルを濡らして固く絞ってレンジで1分。 これをね、2時間おきぐらいに ずーっとやってなさい。 そんな面倒なことできねっす。 そこを鍼で何とか治してくだせえ。 「きょうはたくさん打つよ。 一応、『自律神経』のほうもやっておくから」 鍼がバシバシ刺さっていく。 長さは5ミリぐらいなので痛みはほとんどない。 で、鍼の頭の上に絆創膏が貼られる。 数えてもらったら15個あるらしい。 「でもさ、夜になんでそんな自転車乗るの?」 前回の初診時、 診察申込書の職業欄に「自営業」と書いて、 ピアノとかバンドとかは話していたが。 ジャズやるんだ? へぇー。どこで?浅草? そうなんだー。オレもねジャズ大好きなの。 昔のブルーノートのLPとかたくさんあるよ。 いいよねー、ジャズは。 金町のかかりつけ医といい、 瑞江のここといい、偶然にもジャズ好きだ。 「うちにもジャズのミュージシャン、患者でいるよ」 へぇ。 そうなんですか。 ま、ここら辺は家賃も安そうだし、 生息してるかもね。 歌とかやってる人?女性? あ、ピアノなの?男なんだ。 ふーん。 「名前ど忘れしちゃった。親父もよく来てるんだけど」 背中にぱちぱち打ちながら、 誰だっけな?思い出せないな、気持ち悪いな、と。 あいつ、こないだ待合室にチラシ貼ってったんだけどな。 手をとめて 松葉杖を使わずに待合室へ跳ねていく先生。 この先生、片足がまったくなくて、 義足をつけてもない。 「あれ?貼ってあったんだけどなー」 いや、先生、別にいいですから。 別に誰だかわからなくても。 どうせ聞いても知らない人だろうし。 「いや、たぶん知ってるよ。絶対知ってるハズ」 へ?絶対? 今度は診療机の棚から、 膨大な数の診療申込書をめくり始める。 ばらばらばらばらとめくって。 「あった。この人」 こういうのを見せてしまうって、 この人に個人情報保護の精神はないのか。 ちらっと見たら、びっくり。 たしかによく知られたピアニスト。 ええ、絶対知ってました。 いやーこいつの親父がね、 この辺りで居酒屋をやっててね。 昔から親父がうちの患者だったのよ。 息子も今じゃメジャーになっちゃってさ、 大きなホールとかでしかやらないんだよね。 こないだ来たときにさ、チケットくれって言ったら、 それはダメです、買ってくださいとか言うんだよ。 こないだはさ、黒人の仲間を連れてきてさ、 サックスだかラッパだか吹いてるやつ。 えーっと、誰だっけな。 あぁ、これだ。 覚え違いじゃなければ、 マルサリスのバンドで吹いてたアルト吹き。 マジですか。 こいつがさぁ、 酔っ払ってきちゃってさ、 そこのトイレの前でしょんべんもらしちゃってさぁ。 もうホントに勘弁してくれよぉ~だよ。 あ、あと紹介で悌二もたまに来ているよ。 前はトリオのレギュラーで弾いてたでしょ? 今は若い人に代わっちゃったみたいだけど。 なにげによく知ってる。 「今度あいつ来たら、同じピアニストで 『鍵田さんって知ってる?』って聞いておくよ」 先生、それはやめてください。 絶対知らないですから。 ど下町の一軒家、 掃除も行き届かない 散らかり放題の診察室。 こんなところで(と言っちゃ失礼だけど)、 とっかえひっかえミュージシャンが 鍼を打たれたりしてると思うと、 なかなか面白い。 本日の診療代は4千円也。 前回は初診だったから7千円。 地元でもらう薬代もあるし、 ここにきて頭よりも痛い出費。 夕方、 帰宅した嫁に一部始終を話すと、 ひとこと。 「そんなに上手い人ばかり来るなら、 あんたも上達のツボ探してもらって 鍼を打ってきなさいよ」 頭痛がひどくなってきた。
by showtkgg
| 2009-11-04 23:57
| 頭痛
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